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プロフィール

玉葱ハンター

Author:玉葱ハンター
・H4年生まれ、秋田県出身。

・手描きイラストは素人の独学でどのレベルまで上達できるかを研究中。
・小説は推理モノのみを読む。
寂しがり屋&テレ屋ですので、宜しければどんどん話しかけて下さい!


・メールアドレス holy.horus◎gmail.com (◎を@に変換)

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03.エデン

 視界に入ったのは、青と赤が激しく混濁した、強烈な色彩の空。群青色の地面と、寂しげに葉を茂らせた、一本の広葉樹だった。窓の向こうに見える景色である。
 自分が立っているのは室内だった。窓際には林檎の様な果実が乗った、皿が一つ。
 そして私の足元には、一人の女性。
 衣服を一切身に着けていない、あられもない姿である。窓際の壁に張り付くようにして屈み込んでいる。
「おはよう」
 女性が、口を利いた。
「私の事、分かる?」
「……知らない。誰だ?」
「やっぱり、分からないんだね……。別に、もういいけど」
壁02
「それ、食べないでね」
 女性が、窓際の林檎を顎で指し示す。
「君は誰なんだ? ここは、何処なんだ?」
「答えたくない。何度言っても、覚えてくれないんだもん」
「えっ?」
「私は、あなたの事知ってるよ。──サラリーマンってやつなんでしょ? いつも同じ場所にいて、いつも同じ格好。朝から夜までずっと動き続ける生き物で、周りにいる人と何もかも同じ様に振る舞わなきゃいけない。違う?」
 私は、思わず閉口してしまった。
 もしも私が名前を名乗らずに自己紹介するとしたなら、今の彼女の様なセリフを溜息混じりに吐くだろう。そう思ったからである。
「あなた、最初からずっとここにいれば良かったのに。何度出て行っても、必ず戻って来ちゃうんだから。面倒でしょ?」
「言ってる意味が分からないな」
 そう言いながら、私は部屋の出口を探す。だが、外へ通じているのは目の前の窓しかなかった。
 彼女の横を抜けて、窓枠に手を掛ける。
「何処に行くの?」
「勿論、帰るのさ。残ってる仕事があるんだよ。ドアが無いなら、窓から出るしかないだろ」
 私は窓枠に足を掛けると、そのまま跳躍して外へと飛び出す。
 地面の青黒い草を踏みしめつつ、立ち止まらずに歩いた。いつもより、歩調が速い。多分、気のせいではないのだろう。
 不意に、後ろ髪を引かれる様な感覚に襲われ、後方を振り返る。じっとこちらを見つめている、女性の姿があった。
 私は何も見なかったように装い、前を向いて歩き続けた。


「おかえり」
 窓から室内に踏み込んだ私に、女性が掛けた第一声がそれだった。
「帰れなかったでしょ。随分と歩いたみたいだけど」
「──どうなってるんだ、ここは。何処まで歩いても全く景色が変わらない。前に進んでも、左右に曲がっても、必ず目の前にこの場所とあの木が一本見えるだけだった」
「そうだよ。私、必ず戻って来ちゃうって言ったでしょ?」
「言われたからって、普通、信じられるか」
 歩き疲れた私は、窓際に背中を預け、そのまま崩れ落ちるように床に座り込んだ。
 女性が、私の真横に座る。互いの肩が、ぴったりと触れ合う。私に裸体を晒す事に羞恥心など無い、といった様子だった。
「歩くの、もう飽きたでしょ。──ここにいてよ」
「ああ、少し休ませてもらうよ」
「少しじゃなく、ずっといて。私を一人にしないで。──どうせ何度やっても同じ結果になるんだから」
 女性は私に腕を絡める。彼女の淡い体温が、徐々に服の下へ浸透するような、何とも言えない柔らかさを感じた。このまま、少しの間こうしていようと思った。
 やがて私は、窓際に置かれたあれの存在を思い出す。
 何かに突き動かされるように、私は立ち上がった。女性は、急な私の動きに即応出来ず、体制を崩してしまう。
「それは……!」
 女性が瞠目する。
 私は、窓際に置かれた皿から、林檎を掴み上げていた。
「駄目。食べないで!」
 ひどく取り乱している女性。私は、予想外の反応に驚いた。
 この奇妙な世界は、何もかもが未知数である。この小さな果実を食べる事で、現状を一変させる程の何かをもたらす効果があるとしても、不思議は無いのだ。
 彼女の豹変振りには、間違いなく何かがある。
「止めて! きゃっ!」
 何とか止めようとしがみ付く女性の顔を、私は乱暴に壁へ押し付ける。動きを封じられてもなお、女性は必至にもがき続けた。
 私は、林檎にかぶり付く。
「あ──」
 林檎を口に含んだ、その刹那。
 突如、私を強烈な頭痛が襲った。平衡感覚が失われ、とても立っていられない。
 私は、目を閉じた。



「おはよう」

「私の事、分かる?」
「……知らない。誰だ?」



*うおお。これが今月初の更新だったっ。
いやあ、最近はすっかり寒くなりましたねえ。皆さん、風邪とか引いてませんか?

あ、僕は大丈夫です。寒さにはめっぽう強い秋田県民ですので、いまだにパンツ&シャツで寝ていますよ。



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02.リンカーネイション

とある、古い山小屋へと立ち寄った。
その最奥、錆付いたドアの向こうに置かれていた、一冊の日記を手に取る。


○月9日

・山からの岐路につく途中、私は右脚を負傷してしまい、この小屋へ一時的に身を寄せることにした。そして、身の毛もよだつ恐ろしい体験をしたのだ。
 この部屋で体を休めていた私に、突如何処からとも無く侵入した何者かが、斧を持って襲いかかってきたのである。
 私は、その人物を殺してしまった。きっとあの場合は、誰しも私と同じ選択をするほか無かった筈だ。

・その人物は、若い女だった。
 女は、まるでこの世の物とは思えないような様相である。全身の皮膚という皮膚が、真紅に染まっていたのだ。健康的な血色から程遠い、毒々しいまでの赤。この女は何者なのだ?

・私はこの部屋の小窓から、女と斧を投げ捨てた。あの女は既に事切れているに違いないだろうが、とても同じ部屋には置いておけない。


○月10日

・あの女との格闘で、右脚の怪我は悪化していた。満足に立ち上がることが出来ない状態である。
 今の私に出来る事と言えば、小窓の向こう側を眺め、私を救出してくれる者を待つ事が精一杯だ。

・ふと、おかしな事に気付いた。
 前日に投げ捨てた女の死体が無い。おそらく、獣が持ち去ってしまったのだろうか。

・女の死体があった地点をじっと注視すると、もう一つおかしなものが目に入った。
 見た事も無い、真紅の花が一輪だけ咲いていたのである。


○月11日

・私はもう限界だ。右脚の激痛に伴い、体が激しい痙攣(けいれん)を起こしている。破傷風だろうか。
 もう、こうしてペンを持つのも一苦労だ。

・窓の外には、昨日見た筈の真紅の花は無かった。しかし妙な事に、窓の外には今朝からまるで私をずっと監視するかのように一羽の鳥が休むことなく飛び回っている。
 定まらない意識の中、窓の向こうを舞う鳥の体色が赤色に見えたのは、私の気のせいだろうか?


○月12日

・先程からこの部屋のドアを、しきりに叩きつけるような轟音が山小屋中に響いている。
 私は見てしまった。窓の外、昨日煩わしく空を飛んでいた鳥の、地面に横たわる、もう赤くない骸を。

・恐らくドアの向こうから、今に真っ赤な体毛を持った禽獣(きんじゅう)の類が私を捕食しにやって来るのだ。
 幸いにも、昨日よりはいささか私の体は回復していた。小型獣と一戦交える程度の余力は、かろうじて残っているだろう。右脚はもう満足に動かないが、腕力は問題なさそうだ。

・しかし、一つ思う事がある。
 今に扉の向こうからやってくる来訪者を私が返り討ちにしたとすれば、次は──



日記はそこで、ぷっつりと途切れていた。そして思い出す。
今日は、○月13日だった。

冷たい気配を感じて、後方を振り向く。

右脚を引きずった赤色の怪人物が、斧を持って歩み寄ってきていた。




*ひさしぶりの更新だぜっ。やっとだぜっ。

うちの母が、物理的なケガで入院しましてね。現在、家の火事と父親の面倒を僕一人が全部背負っている状態なんですよ。あ、またグチっちゃった。
父親って、何で家事を一つもやらんのでしょう? 出来ない、とかヌカしやがるし。 団塊の世代って、みんながみんなああいう風なんだとは思いたくないけど……。

やっぱ僕の場合は、時間に余裕がないとこういう活動って続けられないですねえ。正社員で働きつつもブログ頑張ってる全ての人、心より尊敬させてくれい。

ブログやめちゃったの? ──的な雰囲気をかもしつつも、止めない。それが当ブログでございますです! はい!

01.水人間

「ボクは、誰にも傷つけられない体になりたいんです」

 悲愴に満ちた面持ちで、少年が言った。ワイシャツを来た、小柄な少年である。
 立ち尽くす少年の前には、重厚なテーブルが一つ。そして、その上に頬杖を突きながら少年を見つめる、謎の黒衣の人物。頭部はすっぽりとフードで覆われており、その装いは見るからに妖しげである。
「いつも、学校でいじめられるんです。物を壊されたり、人のいないところに連れて行かれて、蹴られたり、殴られたり」
「ふむ。苦労しているようだね」
 その不審な格好に反し、黒衣の人物はとても優しげな声だった。
「──よろしい。では、君の願いを叶えてあげようじゃないか」
 いつの間にか、黒衣に人物の手には小さなビンが握られていた。中には、なにやら赤黒い液体が入っている様子である。
「さあ、受け取りたまえ」
「これは、何ですか?」
「君の苦悩を浄化するための、魔法の聖水だよ。それを飲んだ瞬間から君の肉体は、何者にも侵す事の出来ない神秘を獲得し、誰一人として君を傷つけることは出来なくなるだろう」
「ほ、本当ですか!」
 少年はそう言うと、乱暴にビンを開けた。ビンを口にくわえ、中の液体を一気に口内へ流し込む。
「──飲みました。これで、どうなるんですか?」
「すぐに分かるさ。確かめてみたまえ」
 ふと、体に違和感を感じた少年。恐る恐る、自分の手を見る。
 少年の手は、水になっていた。
 宙に手をかざすと、そのまま向こう側が透けて見えるのである。しかし、どうやら質量を失った訳ではないらしい。触れてみると、確かに少年の手は実在していて、触れることが出来た。触れた場所から波紋が広がり、不規則に流動し、崩れたかと思うとすぐ元に戻る。まるで、時間が逆行しているかのような錯覚を覚える。
 少年の肉体は驚くほどの透明度と、形状記憶の性質を獲得したのだ。
「すごい! すごいですよ、これは!」
「そうだろう。その体があれば、君は蹴られようとも殴られようとも──例え刃物で切り付けられようとも、全く傷を負う事は無いのだよ。喜ぶがいい。君の願いは、成就した訳だ」



「これは最高です! ああ、よかった。本当にすごい!」
 小躍りする少年。先程までとは別人であるかのような変わりようである。
「どうやら、気に入ってもらえたようだね」
「はい! これでボクは幸せになれます! ありがとうございました!」

◇◇

「手術が、出来なかった?」
「うん。信じられないけどね」
 とある病院の一室で、白衣を着た看護婦と、眼鏡をかけた若い医師が会話していた。
「どういう事なんですか、先生。盲腸の手術だったんですよね?」
「そうだよ。全く難しいことなんかない、ごく普通の盲腸の手術」
 先生と呼ばれた男が、後頭部をかき乱しながら看護婦に応答する。
「あまり知られていないようだけど、盲腸は放っておくと穿孔(せんこう)して腹膜炎になってしまう。十二指腸とか、場所が悪いと最悪は半日程度で死亡するケースだってあるんだ」
 若い医師は手を動かしつつ、看護婦に講釈する。
「今回の患者──彼の場合は早急に入院が必要な状態だった。でも、幸い発見が早かったから、すぐに手術に取り掛かる事が出来たんだよ。だけど……」
「手術が中止になってしまった、と」
 看護婦の口調は、やや呆れた様子である。
「じゃあ、何が原因で手術は中止されちゃったんですか?」
「──メスが入らなかったんだ」
「はい?」
 予想通りの反応だ──とでも言いたげに、医師は看護婦を横目で見る。
「彼の体、びっくりするぐらい柔らかかったんだよ。いくらメスで切開しても──文字通り、ヌカに釘を打ってるような感じでね。何度やっても上手くいかなかったんだよ」
「……先生、相当疲れてますよ。ちょっと数日お休みになった方がいいと思います」
「ああ、自分でもそう思う。……そう思いたい」
 医師は額に手を当ててうつむいた。その様子に看護婦は、じっと不憫そうな視線を送る。
「──ちなみに先生、その患者さんは今どこにいるんですか? 高校生の男の子、って言ってましたよね」
「そうだよ。つい今しがた、病室まで様子を見に行ってきたんだけどね」


「ぐっしょり濡れた、無人のベッドがあるだけだった。僕はどうやら、疲れて幻覚を見てたのかも知れないね」


<完>



気分転換のために、ちょいと自作の短編小説をどーん。
高校生の頃は、同級生の連中にIQテストっぽい問題作って遊び相手になってもらってたもんです。あの頃は若かったぜ。

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